商品について
DENONが培ったオーディオ技術を結集したオンイヤー、ダイナミック、密閉型ヘッドホン
セラミック・フィニッシュ・GFRP(繊維強化)・イヤーカップを採用
40mm フリーエッジ カーボン/ペーパー コンポジット振動版によりナチュラルかつ豊かな再生音
イヤーパッド、ヘッドバンドは新開発の人工皮革によりよい肌触りを実現
デビュー25周年を記念してトリビュートアルバムなどいくつかのプロジェクトが企画された高野寛。そのハイライトがブラジル、リオデジャネイロで録音されたアルバム『TRIO』だ。1曲目の「Dog Year、 Good Year」の冒頭から、深みとコクのある音が耳に届いた。ベース、ドラムスが太く粘り気がある。かといって鈍重にはならない。このサウンドは、デノンのアンプやCDプレーヤー、スピーカーなど他の製品のまさしく同一のものだ。音場もまとまり過ぎず、広がり過ぎずの均衡を保っている。ゆえに、音楽がどっしりとし、落ち着きのある表情を見せる。
特に映画音楽の作曲家として高名なマイケル・ナイマンの作品にクラシックピアニストのヴァレンティーナ・リシッツァが挑んだ『ピアノ・レッスン〜リシッツァ・プレイズ・ナイマン』。原曲はオーケストラ編成が多いナイマンの作品を、ピアノ1台で表現する。本機から聴こえてくるのは、決して分析的な音ではない。柔らかで音同士が調和するように響く。余韻の成分も多く、中規模のホールで聴いているかのようなライブ感を味わえた。また、ピアニッシモから次第にフォルテへと音が力強く鳴り響く様子もなだらかに伝え、高域も耳に刺々しく響かない。
最後に聴いたのはリファレンスのホセ・ジェイムズ『While You Were Sleeping』。やはりこのファイルでも上記2アルバムと同様、優しげな音場を体感した。このアルバムの一つの特長はエレキギターの先鋭的なサウンドにある。他のモデルではそれがやや耳に痛くなる場合もあった。だが、本機はそのエッジをなだらかに切り取って表現した。しかし、単にソフトなわけではなく、音楽のボトムが太くなり、リズムセクションも逞しくなったように思えた。
何もかもを欲張りすぎず、リラックスして音楽と向き合える、そんな大人のヘッドホンだ。
文:中林直樹
※AV/オーディオ/ガジェット情報サイト「PHILE WEB」所収記事を短くまとめたものです。